パーソナルAIアシスタントOpenClawが、エージェント基盤として一段と使いやすくなりました。

2025年12月27日にGitHubで公開されたOpenClaw 2.0.0-beta3は、89件の変更を含む大型アップデートです。OpenClaw Changelogの告知では、browser・canvas・nodes・cronの第一級ツール化、セッション単位のモデル選択、Discord bot transportの追加がハイライトとして挙げられています(参考)。

この記事では、公式リリースノートに基づき、beta3で何が変わったかと、既存ユーザーが押さえるべき破壊的変更を整理します。

この記事でわかること

  • browser・canvas・nodes・cronが第一級ツールになった意味
  • セッションごとのモデル選択とカスタムプロバイダの設定方法
  • Discord連携のallowlistとメンション制御の仕組み
  • 設定ファイルの破壊的変更と移行の要点

OpenClaw 2.0.0-beta3とは

https://github.com/openclaw/openclaw/releases/tag/v2.0.0-beta3

OpenClawは、自分のマシンやサーバー上で動かすパーソナルAIアシスタントです。WhatsAppやTelegram、Discordなど複数のチャネルからメッセージを受け取り、Gatewayと呼ばれる常駐プロセスがセッション管理やツール実行を担います。READMEでは「Gatewayは制御プレーンであり、製品そのものはアシスタント」と位置づけられています。

2.0.0-beta3は、2025年12月27日にsteipete氏によってリリースされました。macOS向けのDMG・ZIP、CLI向けのtgzが配布されており、リリース本文にはHighlights・Breaking・Fixesなど計89件に及ぶ変更が列挙されています。

旧スキルから第一級ツールへ移行した理由

これまでbrowser・canvas・nodes・cronは、clawdis-*という名前のスキルとして提供されていました。beta3ではこれらが第一級のClawdisツールに置き換えられ、ツールスキーマがエージェントランタイムに直接注入されるようになりました。

スキルはエージェントが必要に応じて読み込む補助的な仕組みです。一方、第一級ツールはランタイム起動時からスキーマが組み込まれるため、モデルがツールの存在を最初から認識できます。ブラウザ操作やCanvas描画、ノード端末の制御、定期実行(cron)といった基盤機能をエージェントの「手足」として安定して使うには、この統合が欠かせません。

browserツールでは、actがCSSのselectorを受け付けなくなりました。代わりにsnapshotのrefs(デフォルトはai)か、逃げ道としてevaluateを使います。AI向けスナップショットを基準に操作する設計へ寄せた変更です。

セッション単位のモデル選択とカスタムプロバイダ

beta3のもう一つの柱は、セッションごとにモデルを切り替えられる点です。models.providersの設定は~/.clawdis/agent/models.jsonにマージまたは置換され、LiteLLMやローカルのOpenAI互換サーバー、Anthropicプロキシなどをカスタムプロバイダとして登録できます。

モデルを切り替えると、次の実行に向けてシステムイベントがキューに入り、アクティブなモデルが追跡されます。/model statusは利用可能なモデル一覧を表示し、/modelと同じ内容を返します。ローカルLLMをOllamaやLM Studioで動かしつつ、別セッションではクラウドモデルを使う、といった使い分けが現実的になりました。

並列実行の制御も強化されています。agent.maxConcurrentでグローバルな同時実行数の上限を設けつつ、セッション内は直列処理を維持します。/queueコマンドでキューと割り込みの挙動をセッション単位で上書きでき、/queue reset|defaultで元に戻せます。デフォルトはWhatsAppとTelegramが割り込み、DiscordとWebChatがキュー待ちです。

Discord bot transportとグループチャット制御

Discord連携は、DMとギルドのテキストチャネルに対応する新しいプロバイダとして追加されました。allowlist(許可リスト)とメンション制御がデフォルトで有効です。意図しないチャネルへの応答や、グループ内での無差別な発言を防ぐための仕組みです。

グループチャットでは、/activation mention|alwaysコマンドでチャット単位の起動モードを切り替えられます。mentionはメンション時のみ応答、alwaysは常時応答です。routing.groupChat.requireMention=falseがデフォルトの起動条件として尊重され、グループごとの上書き設定がない場合に適用されます。

macOSアプリのConnections画面にもDiscordプロバイダのステータスと設定UIが追加され、メニューバーから状態を確認できます。

Gateway周辺の拡張

外部からの起動や自動化にも手が入りました。Gateway webhooksでは、専用トークン認証付きのwakeフックと、隔離されたagentフックが使えます。Hook mappingsとGmail Pub/Subヘルパー(clawdis hooks gmail setup/run)は、自動更新とTailscale Funnel対応を備えています。

バックグラウンドのbashタスクは、20秒で自動的にyieldするか、任意のタイミングでyieldできます。processツールでセッションの一覧取得・ポーリング・ログ閲覧・書き込み・killが可能です。Gatewayの再起動はclawdis_gatewayツールのactionからSIGUSR1を送るだけで行え、supervisorなしのプロセス内再起動に対応しました。

破壊的変更で押さえる設定の移行

beta3では設定構造が大きく整理されています。inbound.*は廃止され、代わりにトップレベルのrouting(allowlist・グループルール・文字起こし)、messages(プレフィックス・タイムスタンプ)、session(スコープ・ストア・mainKey)を使います。旧キーは読み込まれません。

ハートビート設定はagent.heartbeatに移動しました。every: "30m"のような期間文字列と、任意のmodelを指定します。agent.heartbeatMinutesは削除され、agent.heartbeat.everyを設定しない限りハートビートは無効です。配信先は最後に使ったチャネルがデフォルトで、WhatsAppのreply-heartbeat挙動は廃止されました。agent.heartbeat.targetto、あるいはtarget: "none"で制御します。

セキュリティ面では、Gateway認証のPAM/systemモードが廃止され、トークンまたは共有パスワードのみになりました。Tailscale Funnelもパスワード認証が必須となり、トークンのみでの公開露出はできません。

beta3を試すときの注意点

アップデート前にroutingmessagessessionagent.heartbeatの設定を公式ドキュメントと照合してください。旧inbound.*agent.heartbeatMinutesに依存した運用はそのままでは動きません。

Discordを有効にする場合は、allowlistとメンション制御の初期設定を確認したうえで、ギルドやDMのチャネルIDを許可リストに登録する流れになります。discord.enabledで自動起動を無効化することもできます。

macOS向け配布物には公証(notarization)フローが追加され、Developer ID署名が自動選択されます。CLIから入れる場合はtgz、デスクトップアプリとして使う場合はdmgまたはzipを選べます。