日本の地球観測スタートアップSynspectiveの衛星コンステレーションが、10機目の打ち上げに成功しました。ニュージーランドからRocket LabのElectronが打ち上げ、SAR(合成開口レーダー)衛星が軌道に投入されています。

この記事では、今回の打ち上げの内容と、日本企業の衛星ネットワーク拡大が意味することを整理します。

この記事でわかること

  • 「Ten Owl Of Ten」ミッションで何が打ち上げられたか
  • StriX衛星のSAR技術が災害監視に使える理由
  • 今後の打ち上げ計画と30機体制への道筋

10機目のStriXが軌道投入、Rocket Labとの連続成功が続く

https://rocketlabcorp.com/updates/rocket-lab-completes-10th-consecutive-launch-with-100-mission-success-for-synspective/

2026年6月27日5時43分(ニュージーランド時間)、Rocket Labはニュージーランド・マヒアのLaunch Complex 1からElectronロケットを打ち上げました。ミッション名は「Ten Owl Of Ten」です。

打ち上げられたのは、東京のSynspectiveが運用するStriXシリーズのSAR衛星10機目です。衛星は高度552kmの低地球軌道(LEO)に投入され、傾斜角は42度です。Rocket Labによると、Synspective向けの専用打ち上げはこれで10回連続の成功となり、成功率は100%です。

今回の打ち上げは、Rocket Labにとって2026年の12回目、通算91回目のミッションでもあります。Electronは高さ約18m、低地球軌道へ最大300kgのペイロードを届けられる小型ロケットとして、同社の主力機です。

なぜSAR衛星が災害監視に向くのか

https://synspective.com/satellite/satellite-strix/

地球観測衛星には、カメラで地表を撮る光学衛星と、電波で地表を観測するSAR衛星があります。SARは夜間でも、雲の裏側でも観測できる点が大きな特徴です。Synspectiveは衛星名のStriXをフクロウの学名にちなんでおり、暗闇でも獲物を見つけるフクロウの能力をSARの特性に重ねています。

StriX衛星は質量100kgクラスの小型機です。打ち上げ時は約80cm四方のキューブ型ですが、軌道上でアンテナを展開すると全長5mになります。Xバンド(中心周波数9.65GHz)のレーダーを搭載し、地上解像度1〜3m、観測幅10〜30km以上の画像を取得します。運用寿命は約5年です。

Synspectiveの公式サイトによると、従来の大型SAR衛星と比べてStriXは質量が約1/10、開発・打ち上げ費用は約1/20に抑えられています。内閣府のImPACTプログラムで培われた技術を、東京大学・東京工業大学・JAXAと共同で小型化したのが出発点です。

都市計画、インフラ監視、災害対応が主な用途です。台風や豪雨で光学衛星が雲に遮られる場面でも、SARは地表の変化を追跡できます。コンステレーション(衛星群)を増やすほど、同じ地点を短い間隔で撮影できるため、災害発生直後の状況把握や被災地の変化検知に効きます。

30機体制へ向けた打ち上げ計画

Synspectiveは2020年代後半までに30機の小型SAR衛星によるコンステレーションを目指しています。Rocket Labとの契約では、今後17機分の打ち上げが予約済みで、次のミッションは2026年第3四半期初めの見込みです。

Rocket Labは2020年からSynspectiveの唯一の打ち上げ事業者として、StriX衛星をすべてElectronで投入してきました。2025年9月には追加の10回打ち上げ契約が発表され、Synspective向けの専用Electron打ち上げは合計21回に達しています。これは単一顧客向けのElectron専用打ち上げとして最大規模の契約です。

打ち上げのたびに、StriX衛星の寸法に合わせた専用フェアリング(衛星を覆う先端部)をRocket Labが製作しています。衛星ごとに形状が異なる小型機を確実に軌道に乗せるための工夫で、10回連続成功の一因とされています。

日本の宇宙ビジネスが示す実用路線

日本初の商用SAR画像取得を2020年に達成したSynspectiveは、研究開発型のスタートアップから量産・運用フェーズへ移行しつつあります。衛星1機あたりのコストを下げ、打ち上げ間隔を短くすることで、地球観測データを「災害時に使えるインフラ」として届ける戦略です。

光学衛星が得意な鮮明なカラー画像とは役割が異なり、SARは天候に左右されない定点観測が強みです。10機体制になったことで、日本周辺の観測頻度とデータの鮮度が一段上がります。行政の防災対応や民間のインフラ点検など、地上の意思決定を支えるデータ基盤としての価値が高まります。

Rocket Lab側も2026年に年間12回目の打ち上げを達成し、小型ロケット市場での稼働頻度を維持しています。日本企業の衛星と海外の打ち上げサービスが組み合わさる形で、宇宙開発の実用化が着実に進んでいます。