Microsoftがクラウド向けLinuxディストリビューション「Azure Linux 4.0」のISOイメージを公開しました。これまでAzure Marketplace経由のVM展開が中心だった配布形態に加え、Hyper-VやQEMU/KVM上のローカル仮想マシンでもインストールして試せるようになりました。
この記事でわかること
- Azure Linux 4.0のISO配布で何が変わったか
- Fedoraベースの新バージョンの主な技術仕様
- ダウンロード手順とプレビュー利用時の注意点
- Azure Linux 3やコンテナ専用版との違い
Azure Linux 4.0とは何が変わったか
Azure Linux 4.0は、MicrosoftがAzure向けに最適化したサーバー向けLinuxディストリビューションの次期メジャーリリースです。2026年5月のOpen Source Summit North Americaでパブリックプレビューが発表され、2026年7月にISOイメージの配布が始まりました。
これまでAzure Linuxを試すにはAzure MarketplaceのVMイメージかコンテナイメージを使う必要がありました。ISOの公開により、Azure契約がなくてもローカル環境でブート・インストールして動作を確認できます。x86_64とARM64の両アーキテクチャに対応しています。
ただし現時点ではパブリックプレビュー段階です。Microsoft Learnの公式ドキュメントでも「評価・テスト目的に限定し、本番環境には適さない」と明記されています。ISOが出たからといって本番投入が解禁されたわけではありません。
Fedoraベースへ移行した背景
Azure Linux 4.0の大きな転換点は、ベースOSがFedora Linuxに切り替わったことです。前身のAzure Linux 3はVMware Photon OS由来の構成でしたが、4.0ではFedoraのパッケージソースとメタデータを土台に、Azure向けの変更をTOMLベースの設定で宣言的に上書きする方式に移行しています。
MicrosoftはFedoraエコシステムのRPMパッケージ管理に加え、Azure向けカーネル最適化、サプライチェーンセキュリティ、コンプライアンス対応を独自に組み込んでいます。Fedora由来である一方、Fedora Serverの単なるリブランドではなく、Fedoraパッケージとの互換性はありません。デフォルトで有効なリポジトリもazurelinux-baseとazurelinux-microsoftの2つに限定されています。
主な変更点と技術仕様
https://github.com/microsoft/azurelinux
カーネルはLinux 6.18 LTSを採用しています。新しいハードウェアドライバ、Hyper-V統合の改善、GPUやAI/MLアクセラレータのサポートが強化されています。パッケージマネージャは、Azure Linux 3で使われていたtdnfからdnf5へ刷新されました。dnf5は依存関係の解決が速く、メモリ使用量も抑えられる設計です。既存のスクリプトやDockerfile、CIパイプラインでtdnfを参照している場合は、dnf5またはdnfへの書き換えが必要です。
コアコンポーネントも一式更新されています。glibc 2.42、OpenSSL 3.5.4、systemd 258.4、Python 3.14.3などが含まれます。セキュリティ面ではSELinuxの強制モードが有効で、SSHアクセスやAzure向けの監視ツールも標準で備わっています。FIPS 140-3認証は進行中で、認証が必要なワークロードには認証済みリリースの利用が推奨されます。
ライフサイクルについては、LTSカーネルを追跡し月次のセキュリティ更新を提供する方針です。一般提供(GA)に向けて、具体的なサポート期間と更新ポリシーは別途公開される予定です。
ISOの入手とローカルでの試用方法
ISOイメージはGitHubリポジトリのREADME内「Using Azure Linux」セクションの「ISO Installer」から取得します。GitHub Releasesにはカーネルビルドのみが置かれており、ISOはREADME内にリンクされています。
- x86_64: https://aka.ms/azurelinux-4.0-x86_64.iso
- ARM64: https://aka.ms/azurelinux-4.0-aarch64.iso
ダウンロード後は、リポジトリ内の手順に従いチェックサムと署名を検証してからインストールします。インストーラはAnacondaを使用するテキストベースのCLI形式です。WindowsではHyper-V、LinuxではQEMU/KVMでの動作が公式に案内されています。
The Registerの検証では、ISOのダウンロードサイズは約1GB、インストール後のディスク使用量は約1.1GB、メモリは約359MBで動作したと報告されています(参考)。プレビュー版のためパッケージ数はまだ限定的で、一部の基本ユーティリティが未収録の状態です。
サポート範囲と既存版との違い
Azure上で利用する場合、Microsoftの公式サポートとSLAが適用されます。Azure外のベアメタルやローカルVMへのインストールも技術的には可能ですが、ISO経由の利用に対するサポートはコミュニティベースです。GitHub Issuesが主な問い合わせ先になります。
Azure Linux 3からの移行を検討している場合、GA後にMicrosoftの社内サービスも順次4.0へ移行する計画です。3.0は移行期間中もサポートが継続されます。
コンテナホスト専用の「Azure Container Linux」とも役割が異なります。Azure Container LinuxはAzure Kubernetes Service向けの不変(immutable)なコンテナホスト向けOSです。Azure Linux 4.0は汎用サーバーOSとしてVMやベアメタルで動かすことを想定しており、グラフィカルデスクトップ環境は提供しません。WSLイメージの提供も計画されていますが、デスクトップLinuxの代替ではありません。
試用を検討する際の判断材料
Azure Linux 4.0のISO公開は、クラウド外でもMicrosoft製Linuxの実体を手元で確認できるようになった点が実用的な進展です。Fedoraベースへの刷新、dnf5への移行、カーネル6.18 LTSの採用は、Azure上のLinuxワークロードを運用する管理者にとって移行計画の材料になります。
一方で現状はプレビュー限定です。パッケージの充実度やFIPS認証の完了を待つ必要があり、本番環境への投入はGA後の公式ガイダンスを待つべき段階です。Azure Linux 3の運用を続けている組織は、GitHubリポジトリとMicrosoft Learnのリリース情報を追い、GAスケジュールと移行手順の公開を確認しておくとよいでしょう。