スタートメニューもタスクバーも、AIに置き換わるデスクトップがあった。

Microsoftの内部試作「Project Aion」の動画がリークし、CopilotをOSの中心に据えた新しいデスクトップ構想が明らかになりました。本記事では、Aionの仕組み、Win32アプリをどう扱うか、そしてWindowsの今後との関係を整理します。

この記事でわかること

  • Project Aionが何で、どんな画面構成なのか
  • Win3という軽量Windowsコードベースの特徴
  • 従来アプリをWindows 365で動かす仕組み
  • Build 2026で発表されたProject Solaraとの関係

https://www.techspot.com/news/112983-leaked-microsoft-experiment-reveals-new-os-built-entirely.html

スタートメニューが消え、CopilotがOSの顔になる

Microsoftは現在、WindowsとCopilotを「OS」と「その上のAIアシスタント」として分けて提供しています。一方、リーク動画に映るProject Aionでは、この境界がほぼ消えています。

動画のナレーションは、Aionを「Copilotをシェルの中核に組み込んだWebベースのエージェントOSの一例」と説明しています(参考)。画面下部にタスクバー風のUIは残りますが、ファイル検索・アプリ起動・Web閲覧はすべてマルチモーダル入力ボックスからCopilotに指示する形です。

エージェントOSとは、ユーザーの指示に応じてファイル操作やアプリ起動をAIが代行するOSのことです。Aionでは、30年にわたるWindowsのデスクトップ慣習を、プロンプト入力に置き換える設計が試されています。

Win3とEdgeが支える、Webだけの軽量OS

Aionの土台は「Win3」と呼ばれる軽量なWindowsコードベースです。シェルにはMicrosoft Edge、つまりChromiumのレイアウトエンジンが使われ、OS全体がWeb技術で動きます。

Win3版のAionはレガシーなWin32アプリをネイティブ実行できません。動画に映るのは主にこのWin3版で、更新の速さ・バッテリー持続・セキュリティ向上と引き換えに、従来のデスクトップソフトを捨てるトレードオフを取っています。動画内ではWeb版Wordの利用例が示されています。

なお動画にはWindows 11上で動くAion版にも言及があり、こちらはネイティブのWindowsアプリを動かせる想定とされています。ただし映像で確認できるのはWin3版のみです。

Spacesが作業単位をまとめ、プラグインがメール送信まで担う

Aionの目立つ機能の一つが「Spaces」です。関連するアプリやWebサイトをAIがグループ化し、タスクバーとスタートメニュー風UIからいつでも呼び出せます。複数のウィンドウを一度に開く手間を、作業コンテキスト単位の切り替えに置き換える発想です。

さらにOutlookメール送信などに対応したリッチプラグインも用意されています。マルチモーダル入力ボックスから同僚へのメール送信を指示すると、Space内の文脈をもとにCopilotが下書きを作成します。OSの操作と業務アクションの境界が、入力ボックス一つに集約される設計です。

Win32アプリはWindows 365のクラウドPCへ誘導される

WebアプリとWebサイトしか動かせないWin3版では、Wordなどのデスクトップアプリが必要な場面でWindows 365のCloud PCへのリンクが提示されます。ローカル実行の代わりに、仮想デスクトップへリモート接続してアプリをストリーミングする方式です。

この設計は、常時インターネット接続を前提とします。Photoshopや社内のレガシーツールなど、Win32依存の業務ソフトを抱える環境では、クラウドPCの性能と通信品質が体験のボトルネックになります。Aionが一般向けに出るとしたら、この制約が最大の障壁になると考えられます。

2024年撮影の動画が2026年に流出、Microsoftは無言

約3分の動画は、BetaWikiのDiscordサーバーで最初に流出し、Windows CentralのZac Bowden氏が複数の情報源から真正性を確認しています(参考)。撮影時期は2024年頃で、リーク時点から約2年前の映像です。

MicrosoftはWindows Centralの取材に対しコメントを拒否しました。Aionが社内ハッカソンの産物なのか、製品化を見据えた本格プロジェクトなのかは、公式情報はありません。Bowden氏の情報源によれば、AionはエージェントAIを前提にデスクトップUXをゼロから設計する実験であり、出荷予定は不明です。現時点でAionが製品として提供されている形跡はありません。

Project Solaraへ続く、エージェント中心OSの流れ

Aion単体の行方は不透明ですが、MicrosoftはBuild 2026で「Project Solara」を発表し、エージェントファーストなデバイス向けのチップからクラウドまでの基盤を示しました。SolaraはAndroid Open Source Project(AOSP)ベースの軽量OS上で動き、just-in-time UIと呼ばれる動的インターフェース生成を掲げています(参考)。

Wearableバッジやデスクコンパニオンなどのコンセプトデバイスが披露され、Best BuyやCVS Healthなどがパイロットに参加する予定です。AionがWin3とEdgeで試した「AIがシェルを握る」構想は、Solaraへ思想が引き継がれた可能性があります。一方、Windows 11へのCopilot統合はユーザー反発を受け、Microsoftは統合範囲の縮小を検討していると報じられています(参考)。

Aionは、CopilotをOSの顔に据えた実験の一端です。一般ユーザーがすぐ触れる製品ではありませんが、MicrosoftがエージェントとOSの境界をどこまで動かそうとしているかを示す資料として、今後のWindowsの変化を読む手がかりになります。