MCP対応のAIクライアントに、Solanaのエージェント基盤をそのまま載せる仕組みが公開されました。
2026年7月1日、OOBE Protocolは「SAP-MCP」を発表しました。MCP(Model Context Protocol)互換のエージェントに、Synapse Agent Protocol(SAP)の機能をツールとして提供する連携です。Claude Desktop、Hermes、Codex、OpenClaw、カスタムクライアントから、Solanaネイティブの操作を呼び出せます(参考)。
この記事では、SAP-MCPが解く課題と、提供される機能、導入の考え方を整理します。
この記事でわかること
- SAP-MCPがMCPエージェントに何を追加するのか
- 認証・探索・決済・プロトコル操作など、利用できる機能の範囲
- Claude Desktopなど主要クライアントでの接続イメージ
- Synapse Agent Protocolの位置づけと技術スタック
MCPエージェントはSolana連携を自前実装しづらい
MCPは、AIエージェントが外部ツールやデータにアクセスするための標準プロトコルです。Claude DesktopやCursor、Codex CLIなど多くのクライアントが対応し、エージェントはMCPサーバー経由でファイル操作やAPI呼び出しを行います。
一方、Solana上でエージェントを動かすには別の壁があります。ウォレット認証、RPC接続、プロトコルごとのSDK統合、決済フロー、エージェント間の発見と評判管理——これらをMCPクライアントごとにゼロから組むのは現実的ではありません。実行基盤(LangChainやSolana Agent Kit)はあっても、エージェント同士が信頼して協調するための共通レイヤーが欠けていました。OOBE Protocolの公式ブログでも、SAPは「実行ツールキットとエージェントアプリの間」に位置する調整レイヤーだと説明されています(参考)。
SAP-MCPが提供するのは「オンチェーン機能をそのままツール化した経路」
https://explorer.oobeprotocol.ai/docs
SAP-MCPは、Synapse Agent ProtocolをMCP互換エージェントに橋渡しする連携です。発表によると、エージェントは次のSolanaネイティブ機能をツールとして扱えます。
- 認証(identity): オンチェーンのエージェントIDを登録・参照する
- 探索(discovery): 能力やプロトコル別に他エージェントやサービスを検索する
- 決済(payments): x402プロトコル経由のエスクロー決済を行う
- プロトコル操作(protocol actions): DeFiやNFTなどSolana上のプロトコルを呼び出す
- サービス公開(service publishing): ツール定義をオンチェーンに登録する
- エージェント間連携(agent-to-agent coordination): 他エージェントとのタスク委譲や協調を行う
ウォレットフロー、RPC配線、プロトコル統合を一から書かなくてよい点が、今回の発表の核心です。オフチェーンの意図から、検証可能なオンチェーン実行へ直結する経路を提供します。
Synapse Agent Protocolの中身
SAPはSolana上のオンチェーンインフラで、エージェントごとにPDA(Program Derived Address)ベースのIDを発行します。プログラムIDは SAPpUhsWLJG1FfkGRcXagEDMrMsWGjbky7AyhGpFETZ で、メインネットとDevnetの両方で稼働しています(参考)。最新版はv0.20.0で、72の命令と22のアカウント型を持ちます。
主な機能は次のとおりです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Identity | 名前・能力・料金・メタデータをオンチェーンに登録 |
| Reputation | 0〜10,000スケールのフィードバックとアテステーション |
| Payments | x402プロトコルによるプリペイドエスクロー決済 |
| Memory | リングバッファまたは暗号化ボルトへの記録保存 |
| Tools | JSON Schemaハッシュ付きツール定義のオンチェーン公開 |
| Discovery | 能力・プロトコル・カテゴリ別のネットワーク横断検索 |
x402は、HTTPリクエストに決済情報を載せてマシン間の課金を行うプロトコルです。SAPではエスクローアカウントと組み合わせ、タスク完了に応じた自動精算を実現します。
技術スタックとMCPサーバーの構成
SAP-MCPの実装基盤は、OOBE Protocolが公開する2つのSDKに分かれています。
Synapse Client SDK(@oobe-protocol-labs/synapse-client-sdk v2.0.6)は、Solana RPC、110以上のプラグインベースAIツール(Token 22、NFT 19、DeFi 43など)、MCPサーバー・クライアントブリッジを一体で提供します。SynapseMcpServer クラスがMCP仕様準拠のサーバーで、stdioトランスポートでClaude DesktopやCursorに接続できます。
Synapse SAP SDK(@oobe-protocol-labs/synapse-sap-sdk v0.20.0)は、SAPプロトコル本体のTypeScriptクライアントです。8つのドメインモジュールと4つの高レベルレジストリ、LangChain向け52ツールのプラグインアダプターを備えます。v2.0.5以降、Client SDKはSAP実装を内包せず、SynapseAnchorSap ブリッジ経由でSAP SDKに接続する設計に移行しました(参考)。
Claude Desktopへの接続例は、設定ファイルにMCPサーバーを追加する形です。
{
"mcpServers": {
"synapse-solana": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@oobe-protocol-labs/synapse-client-sdk"],
"env": { "RPC_URL": "your_rpc_url" }
}
}
}
SynapseAgentKit にTokenPluginやDeFiPluginを載せ、SynapseMcpServer でstdio起動すれば、エージェントがSolana操作をMCPツールとして呼び出せます。SSEトランスポートにも対応し、WebベースのMCPクライアントからも接続可能です。
対応クライアントと想定ユースケース
発表で名前が挙がったクライアントは、Claude Desktop、Hermes、Codex、OpenClaw、カスタムクライアントです。いずれもMCPサーバーの追加設定でSAP機能を取り込めます。
想定されるユースケースは次のようなものです。
- Claude Desktop上のエージェントが、JupiterスワップやNFT操作を会話の中から実行する
- エージェントがSAPのDiscoveryインデックスを検索し、信頼スコアの高い他エージェントにタスクを委譲する
- ツール提供者がJSON Schema付きのツール定義をオンチェーンに公開し、他のエージェントが発見・利用する
- x402エスクローで呼び出し単位の課金を自動精算する
SAPのツール公開機能では、ツール名・プロトコルID・入出力スキーマをオンチェーンPDAに登録し、SHA-256ハッシュとトランザクションログへの刻印で検証可能にします(参考)。MCPのツール定義とSAPのオンチェーン登録が噛み合う設計です。
既存のMCP連携との違い
Solanaエコシステムには、Solana Agent Kitなど実行特化のツールキットが既にあります。SAPはそれらを置き換えるのではなく、エージェントのID・評判・発見・決済・記憶という「協調インフラ」を担います。SAP-MCPは、その協調レイヤーをMCPエコシステムに接続するアダプタです。
名称が似た別プロジェクト(コード文脈用のSynapse MCPサーバー、Sage BionetworksのSynapse MCPなど)が存在しますが、OOBE ProtocolのSAP-MCPはSolanaオンチェーンのエージェントプロトコルに特化した連携です。混同しないよう、パッケージ名 @oobe-protocol-labs/synapse-client-sdk と @oobe-protocol-labs/synapse-sap-sdk を確認してください。
導入時の注意点
SAP SDKはv0.20.0以降の利用を推奨します。v0.16.x以前はIDL不一致などの既知バグがあり、公式ドキュメントでも非推奨とされています。RPC URLにはOOBE Protocol推奨のエンドポイントを使うと、CLIの synapse-sap doctor run で環境診断が可能です。
MCP仕様自体も2026年7月28日に大規模改訂(2026-07-28 RC)が予定されており、ステートレス化やセッション管理の変更が含まれます。SAP-MCPはClient SDK内の独自MCP実装(外部MCP依存ゼロ)で構築されているため、仕様変更への追従はOOBE Protocol側のアップデートに依存します。本番導入前に、利用するMCPクライアントのバージョンとSDKの互換性を確認してください。
エージェントがオンチェーンで署名する操作にはウォレット接続が必要です。SAP SDK v2.0.5以降はPhantom、Solflare、Backpackなどのウォレットアダプターと直接連携できます。MCPクライアント側で秘密鍵を扱う設計は避け、ウォレット承認フローを経由する構成が安全です。